スマホを落としただけの話

テキスト

娘と猫カフェに行った。猫アレルギーの私が。猫カフェの感想なんかは、いつかきっと書かせてもらうと思うが、そんなことよりである。

猫カフェで夢中になって猫を撮影しまくっていた娘と、夕飯を食べようとレストランで上着を脱ぎ、荷物を置いたときである。

「スマホがない」

娘はキッズケータイと呼ぶのか、子供用のスマートフォンを持っている。入れられるアプリは制限されているし、登録されていない番号からの受信着信、メッセージはできないようになっている、安心のスマートフォン。カメラもあるので猫カフェでひたすらに猫を撮影したり、推しの子を読んだりしていた。

その命の次に大切なスマートフォンをなくしたらしい。私はいつまで持っていたか、思い出させたり、荷物をひっくり返したりしながら、娘に多少きつく言ってしまったかもしれない。娘のテンションは一気にダウン。さっきまで猫と戯れてたのか、拷問をうけていたのかわからなくなってしまった。幸いにも猫カフェにて忘れ物として保護されており、ことなきをえた。

そんな週末を開けて、月曜日。出社した途端散らかったデスク回りを見てため息を一つ。年の瀬ということも、部署がおじさんばかりということもあってオフィスに人はまばら、ルーティンのネットサーフィンもはかどるというものである。

そういえばAndroidで電子書籍購入したんだった。週末バタバタだったから今日の帰りにでも読もう。今のうちにダウンロードをしよう、と思って気が付く。

「スマホがない」

4年ぶり6回目くらい。私はAndroidOSの、大人用の電話を持っている。入れられるアプリは無制限、エロ動画も見放題、買い物もし放題。お金を払えば世界中の人とコミュニケーションをとったり、ひらたくいえばマッチングできるようになっている。満足のスマートフォン。カメラもあるけど、被写体がいないからあんまりとっていない。

幸か不幸かメイン使いにiPhoneを持っているので、家や会社に置きっぱなしにすることも、カバンに入れっぱなしのことも多い。なくなったのに気が付き文明の利器、デバイスを探すを実行する。

GPSの信号は3日前で途絶えていた。週末に行った居酒屋あたりで息を引き取っている。持ち歩いた記憶も取り出した記憶もないが、そこにいた事実があるのであれば、そこにあるのだろう。もっと定期的に充電してあげればよかった、もっと大切に持ち歩いてあげればよかったと後悔がとまらない。

ただ、所在地はわかった。週末いった激安多国籍居酒屋だ。店員も多国籍すぎて、予約してたのに満席といわれるというサプライズを食らったところで、おまけサプライズを巻き起こしてしまうなんて。

店に電話して受け取りにいく旨を伝えようとすると、忘れ物はないと言い放たれる。いや、GPSはまちがいなく(力尽きるまでは)そこにいるんです、と引き下がるものの、ないものはないと取り付く島もない。

ああ、前日娘に何を言っていたのだ、私は。ドラクエだって背中を見せているつもりが娘ばかりレベルがあがっていく。見つかりやすいところに忘れてすぐ気づき確認できた娘に比べて、あははと間抜けな顔して週末過ごしてようやく気付き、どこにあるかもわからなくなってしまった私は、何者だ。無くしたことすら気づかない父親が偉そうに忘れものについて叱責するという、日本昔ばなしかなんかだろうか。

店員にないといわれても日本語がうまく通じなかったからかもしれないと思って仕事を切り上げて店に行った。これはもはや忌引きである。私のサブスマホ(Android)の。

因縁の店員と対峙したが結局不発。私のAndroidは消失し、慌てた私が回線を止めて、初期化を行い、そしてどっか海外に連れてかれるんだろう。私より海外を楽しんでくれればいい。

キムラ

キムラ。40年物。
よく考えないで人生を送っていたらよくわかんない人生になってしまった。
お腹が弱い。

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