久しぶりに本を買った。中古だけど、好きな芸人のエッセイ本だ。
「読むぞ!」と気合を入れたわけではない。人と待ち合わせをしていて、少し時間があったので、怒涛の「いらっしゃいませッ!」を浴びせてくる古本屋にふらっと入った。ふと思い出して探してみたら、ちょうど目当ての本があった。これはもう運命。購入即決。
買ったのはハライチの岩井勇気さんのエッセイ本、2冊目の作品だ。1冊目も昔買って読んだし、彼の文体がけっこう好きで、今回もきっと面白いだろうなと迷いはなかった。
エッセイという形式も読みやすくていい。短めの話がいくつも収録されているので、ちょっとした空き時間に読めるのがありがたい。テンポもよくて共感できる話も多く、すいすい読み進んでいく。デビュー作のタイトルが『僕の人生には事件が起きない』というくらいなので、今回も些細な日常を掘り下げて語るスタイルは健在。どうでもいい話をここまで面白く書けるの、ほんと才能だと思う。
と、そこまではよかった。
読み進めていくうちに、聞いたことあるエピソードがポツポツと出てきた。毎週ラジオを聴いている身としては、「ああ、これラジオでも話してたな〜」と懐かしさを感じる瞬間がちょこちょこある。
が、ふとした違和感。内容の流れがやけにスムーズ。あれ、ここまで詳しくラジオで言ってたっけ?いや、これは……私、すでに読んだことがあるのでは?
これはもしかしてと思い、本棚を開く。そこにあったのは……まったく同じ本だった。
やってしまった。ドッペルゲンガー。
帯のパターン違いなだけで全く同じ本。むしろ今回買った方が「初版」で手元にあったのが「三刷」と。なにこれ、タイムパラドックス?(※意味はよくわかってない)
念のために言っておきたいのは、「私は前作もちゃんと読んだ」ということだ。記憶にある。魂レベルで読んだ記憶がある。おそらく実家に置いてきたか、誰かに貸したままになっている。私は本を売るタイプではない。売った記憶は一切ない。ないのだ。
それにしても、こういう失敗は何度かある。本に限らず、漫画でも。 スラムダンクみたいに何度も繰り返し読んでる作品は、ちょっとしたセリフまでそらで言えるレベルなのに、連載中の作品なんかは「え、先週どこで終わったんだっけ?」みたいなことがしょっちゅうある。
これはひとえに「繰り返しの力」なんだろう。記憶は反復で定着する。これを子どもたちに伝えるべく、私は晩年、全国の小学校を回って講演活動をしたい。
講演タイトルは、『その本、たぶんもう読んでます』。
よろしくお願いします。