「何の成果も得られませんでした!」調査兵団のセリフが毎週リフレインしてくるのだが、凝りもせず近所のスポーツジムに通っている。
週一程度ではあるが、成果は一向に現れる気配はない。サウナのためにお金を払っているのかもしれない。
最近やたらと幅を利かせている「24時間使い放題!」とか「結果にコミット!」とか、そういったタイプのジムではなく、昔ながらのスポーツジム。プールもついてて子供向けのスイミングスクール、体操教室なんかもやっている。広いし風呂もサウナも立派なので、たぶんそれにお金を払っている。
ジムといえば、有酸素運動系のトレッドミル、エアロバイク、筋トレマシーン(残念ながら一つも名前を知らない)、そして素人が一歩たりとも踏み入れることを許されないフリーウェイトエリア。土足厳禁ストレッチエリア。ヨガもダンスも体操もなんでもござれのスタジオ。

私は筋トレマシーンの使い方が今一つわからない。効いてるのか効いてないのか、そもそもマシンの名前すら知らない。「このくらいでいっか」と自分を即甘やかす天才なので、筋トレマシンとは基本的に距離を置いている。
フリーウェイトなんかは入った瞬間に重力に押しつぶされて死ぬし、有酸素運動はたまにやるけど面白いテレビがやっていないと退屈で5分と我慢できない。
そんなわけで、スタジオでレッスンに参加して“やってる感”を出す日々である。参加するレッスンは主に格闘技の動きをするやつ。平和なジムで実戦はもちろんご法度。参加者には70歳のばあちゃんもいるので、全員で見えない敵を殴り続ける会と化している。
だいたい30分から45分。たまに60分のクラスもあるけど、正気の沙汰じゃないので私は遠慮している。
意外に短時間に思うかもしれないが、汗はかくし翌日、翌々日の筋肉痛はひどいし体にいいことをしている気になる。健康に近づいてる実感がある。筋トレマシンに頼らずとも筋トレできているし、同時に有酸素運動にもなっていると思うので効果は2倍(当社比)だろう。なんの成果も得られていないが。
レッスンは最大60人参加できるらしいが、実際にはそんなに入らない。とはいえ並び順で自分のスペースを確保するシステムなので、スタジオ前方中央のステージにインストラクターがいる都合上、スタジオ両サイド最後方、オセロでいう絶対にひっくり返されないポジションを死守するために早めに並んでいる。いくら通っても慣れることがないので隅っこの方でほそぼそやっているくらいがちょうどよいのである。
ちなみに時間割表があって、毎週決まった時間にレッスンに参加するのが普通なので、必然顔見知りもできてくる。ジムのスタジオってよくわからないコミュニティがあって、わいわいしている。ああいうコミュニティってどうやって発生、参加していくものなんだろう。
いや、属したくないんだけど。たぶん全員年上。でも実年齢は闇に包まれている。ジムの七不思議の一つ。
話しかけられたらどう反応すればいいのかわからない私は、いつも隅っこでやれフックだ、アッパーだとやっているくらいで十分だ。むしろ勝手に頭の中で出席者にあだ名をつけているので、勢い余ってあだ名で呼んでしまったりするリスクを考えたら一言も話したくはない。
もう中学生みたいな髪型のおばあちゃんは「もう中」、赤いウェアに身を包んだサッカー体形のおじさんは「Mrレッズ」、朝一番にお風呂とサウナだけ入って帰っていく「専務」(この人はスタジオで見ない)。
逆に私は、「毎週通ってるのに見た目が何も変わらない謎の存在」なので、たぶんあだ名は……「調査兵団」。 なんの成果も得られませんでした。